2011年5月21日土曜日 1:52

原発災害での政治家の役割,官僚の勤め,民間の仕事

原発災害,すなわち原子力発電の事故は「放射線という目に見えぬ脅威」が相手なために,政治家・官僚・民間でのそれぞれの働きについて,過酷な試練を科しているように見える。時がそれらを風化する前にコメントしておこう。

(1) 政治家の役割

政治家として,官邸サイドの首相,官房長官,関係大臣に限定しておく。本来は,国政・地方自治体などの全ての政治家を含めて論議されるべきだが,私は政治に疎いので,今回は限定して論議する。また地震災害,津波災害が先行して起こっており,輻輳して事件が発生していたが,それにも目を瞑る。多重災害が起こる場合の,事例として今後の研究課題であろう。

原発災害の初期には「官房長官の暴走」が目立ったと感じた。特に;
  • 食品(水,農作物)などの放射線線量率の規制値を「保守的な値」と断定した行動は,収束後に徹底的に解明するべきだ。また法律家としてあまりにも杓子定規的な拘りを見せた事も検討課題だろう。
  • 原発事故発生直後の早い段階で,退避を命じたのは評価する。しかし,その後の20km圏内の外出禁止勧告のころから,説明がボケてきた。原発事故の隠蔽と関連して,徹底的に解明して頂きたい。特に「詳細な検討をしている」といった恍けた説明は糾弾されてしかるべきだ。
    • 仮に,直ぐに言えなくても「検討結果を公表すべき」なのである。
  • 一般に,東電には甘く,退避している住民に冷たいという印象をいまでも持っている。今後の課題研究の対象として注目したい。
  • 法律家として細かい点を正しく運用する能力に長けている感じだが,
    • 「低濃度放射線汚水」の海への放出についての外交的配慮が不足。
    • 諸外国からの支援提案についての適切な感謝の表明,受け入れの準備について,「能力不足だった」=「官僚を使い切っていない」。
    • 一方で,仏国・米国にたいする異常なまでの厚遇処置。ある意味で,外交的アンバランス感が強いのでは?
    • IAEAの提言について,無視が過ぎる;
      • 飯館村の土壌線量率の突出の件
      • 燃料棒溶融についての「水棺」処置への疑問表明の件。
他方,首相の動きもな謎に包まれている部分がある;
  • 「ベントの命令」「ヘリによる1F視察」については,収束後に徹底的に解明するべきだ。
  • また「東電との統合対策本部」の設立は,初期には必然性が在ったのかもし知れぬが,実際は東電のジャーナリストからの盾になっただけでは無いのか。やはり, 収束後に徹底的に解明するべきだ。
  • 「浜岡原発の運行停止要請」 の暴挙は結果として評価する。管さんだけしかできない決断だったと思う。しかし,民主党は,党首からみても追従できない組織であるのが悲しいところだ。
    • 収束後に徹底的に解明すると共に,
    • 軽水炉型原発の論議をするべきだと思う。
    • 同時に,溶融炉型原発の検討をするべきとも思う。
原発事故が安定化に入ったところで,首相を辞し,与野党を含めた本格的政界の改革に突入して欲しい。また原発事故調査委員会には,未来の為に「包み隠さず証言をする」事を強く望む。

(2)官僚の勤め

正直に言って「原子力安全委員会」がいち早く現状解説をしてくれると思っていた。逆に「原子力安全委員会」のコメントがないから原子炉の状況は悪くないと推定していたくらいである。

ところが地上波デジタル放送のニュース解説を聞いていると,とても自分の頭では理解出来なく成って,インターネット越しに放射線線量率のデータを探しまくった。更にCS放送の深夜の「東電や原子力安全・保安院の記者会見」を見て,政府・東電は「事故を小さく見積る,はっきり言えば,意識的に隠蔽」しているのではないかと推察するに至った。

それを確証したのは皮肉にも「原子力安全・保安院の西山審議官のほぼ無意味な会見」が続いたのを見たからである。始めの内は「意識的に細かな説明をしないで,聴く者を恐怖から遠ざける」のかと思った。

ところが,会見中のちょっとした質問でも;
  • 後ろをむいて,講釈を聴き;
  • 2号機のピットからの高濃度汚染水の海水へのリークに対する「素人ぽい工事方法を延々と講釈したり」,
  • 東電がガンマ線の波高分析で核種の同定をミスして「一千万倍」もの間違いを報告したことを強く叱責した。記者団は,逆に「異常を検知したばあい,速報として公表して,後で間違いだったと訂正してくれる方が有り難い」とまで言われたと思う。そえにも関わらず,注意の書面を発行したと息巻いていた。
  • 高濃度汚染水を処理する為に,低濃度汚染水を海に放出始めたと記者会見で発表した。それに対して,記者団が外務省を通じて外国へ通報したかと質問があったが,「それは緊急時であるからしていない」と平然としていた。
    • 私ですら、これは官僚として不適格ではないかと感じた。
 そのほか細かい事を言い出せば幾らでもあるので省略するが,問題は,このような滅茶苦茶な審議官が仕事を続け,「メルトダウン」を口に出した審議官が左遷させられたという点である。

少なくとも,原子力安全・保安院の「原子炉に関する業務の実体部分」は緊急に内閣府に移動して,当面,首相直轄にするべきではなかろうか。

また原子力安全委員会も,内閣府直轄にして,上記組織との円滑な運用が出来るように暫定措置をするべきとおもう。

    (3)民間の仕事
     これを書いているうちに,東電の社長と副社長とが辞任されててしまったようである。それでも将来の為に,この事故で何が起こったのかは包み隠さず記述されるように希望します。


    さて,今回の事故で一番行けなかったのは「事故の状態を過小評価」したのが,「悪の連鎖を加速」したと推定します。

    もし「純水の冷却水が枯渇」した事を素直に「原子力安全・保安院」にほうこくし,保安院が官邸に即報告し,官邸が緊急事態宣言を地方自治体に通報していれば;
    • 武藤さんも即座に炉のシミュレーション結果を官邸に報告するとともに,
    • 社内での緊急対策が機動的に運行され,
    • 国の内外の研究者とか対策組織から,豊富な助言や装置の提供などが迅速に起こったのではなでしょうか。
    遡れば「官僚組織の無誤謬性の神話」こそが原子力行政を謝らせた元凶だと思います。もし今の内閣が自民党であったなら,現状はもっと悲劇的な状況になっていたかも知れません。


    (4) 今後に向けて



    そういう意味では;
    • 八ツ場所ダム
    • 諫早湾干拓事業
    • 米の助成金と農業政策
    などなど,民主党が掲げて来たのは詰まる所, 「官僚組織の無誤謬性の神話の打破」に帰結するからこそ,官僚の抵抗に在った訳だ。

    しかし,今回の原発災害は期せずして,この 「官僚組織の無誤謬性の神話」のほつれを白日のもとにさらけ出した。でも,本来,官僚の方々は能力に長けた優秀な人材ですから,現在の東北地方の被災地域の方々が創意工夫をして,力強く再生の道を辿り初めているのをご覧になって,効率の良い省庁の再編成を心より進めて下さると確信するものです。

    そういう意味で,
    • 現在の内閣は私心を捨てて,地震・津波・メルトダウンの災害復興を勧め;
    • 国会議員は与野党の垣根を越えて,十分に正しい法整備を展開し,
    • 官僚は,災害復興を効果的に進める為に,省庁の垣根を越えて知恵と出し,装備を活用する。
    • 民間は,無意味な規制は国会に修正を求めつつ,新しい創意工夫をもとに事態を回避する。問題は隠蔽するのではなく,問題を共有しながら民間や国・地方自治体と連携しながら克服する。
    といった,ナイーブな方法論に立ち返る必要があるように感じる。

    ~~~~~~~
    Rv.00 2011-05-21 01:52

    0 件のコメント:

    コメントを投稿